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( 2016年2月)

概要

我々のグループはメダカを動物モデルとしてパーキンソン病の研究を行っています。最近の疫学研究では、リソソーム病の一種であるゴーシェ病の原因遺伝子として知られるグルコセレブロシダーゼ(GBA)の変異が、パーキンソン病の強いリスクとなることが分かっており、今回の研究ではGBA欠失メダカを作製し、病態を観察しました。同変異体では、受精2ヵ月後から回転する異常行動が認められ、5ヵ月までに死亡しました。脳の病理学的解析では、ミクログリアの増生と非選択的・進行性の神経細胞脱落が認められました。また、神経細胞においてオートファジー・リソソーム系の異常、軸索の腫脹が認められ、後者の部位に一致してαシヌクレインの蓄積が認められました。さらに我々は、αシヌクレイン蓄積の病態への関与を調べるため、αシヌクレイン欠失メダカを作製しGBA/αシヌクレイン二重欠失メダカを解析しました。しかし、この二重欠失では表現型の改善はみられず、GBA欠失メダカにおけるαシヌクレインの病態への関与は明らかでありませんでした。

ヒトやマウスではGBAを欠失していると出生間もなく致死的となりますが、本モデルは月単位で生存し、モデルとしての有用性が期待されます。また、我々の論文が発表された後に、同じ魚類におけるGBA欠失ゼブラフィッシュの報告もされました。このモデルは生存可能で、我々のメダカモデルといくつか共通する表現型を示しますが、ゼブラフィッシュは内因性αシヌクレインを持っておらず、この点においてもメダカモデルの有用性が期待されます。

論文情報

この研究成果は、米国科学雑誌PLoS Geneticsに2015年4月2日付でオンライン掲載されました。

“Viable neuronopathic Gaucher disease model in Medaka (Oryzias latipes) displays axonal accumulation of alpha-synuclein”
Norihito Uemura, Masato Koike, Satoshi Ansai, Masato Kinoshita, Tomoko Ishikawa-Fujiwara, Hideaki Matsui, Kiyoshi Naruse, Naoaki Sakamoto, Yasuo Uchiyama, Takeshi Todo, Shunichi Takeda, Hodaka Yamakado , Ryosuke Takahashi

PLoS Genetics, 2015. 11, e1005065

DOI: 10.1371/journal.pgen.1005065

URL: http://journals.plos.org/plosgenetics/article?id=10.1371/journal.pgen.1005065

 

その他

研究成果に関する詳細は下記をご参照下さい。

京都大学プレスリリース
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2015/150403_1.html