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( 2015年2月)

概要

ミクログリアによる軸索やシナプスの刈り込み(剪定)は、発生過程における神経回路網の再構築のみならず、学習や記憶などに関わる脳の可塑性と密接に関係していると考えられています。近年、軸索やシナプスの剪定に障害をもつノックアウトマウスがいくつか報告されていますが、ミクログリアの刈り込み能を制御する機構は未だに不明のままです。 そこで研究グループは、まず培養細胞系でこの過程の再構築を試みました。

未分化のPC12細胞(神経細胞系の培養細胞株)を神経成長因子(NGF)存在下の無血清培地で培養すると、軸索が伸長しシナプス様の構造を形成します。その後、培地からNGFを抜くと軸索変性が引き起こされます。NGFを抜いた無血清培地では軸索変性だけでなく細胞も死滅しますが、血清入りの培地に置換したところ、軸索変性のみが生じ、細胞は生存して再び増殖を始めることが分かりました。そこでこの系を用いて、PC12細胞とミクログリア細胞株(MG6)を共培養しタイムラプスで観察してみました。すると、MG6細胞は変性が始まったばかりの軸索を積極的に貪食し除去することで、軸索剪定を促進することが分かりました。

次に、生体内で軸索やシナプスの剪定は神経活動依存的に生じることが知られている為、塩化カリウム刺激でPC12細胞から放出されるエクソソームの効果を検討してみました。すると、このエクソソームをあらかじめ取り込んだMG6細胞は、軸索剪定能が亢進することが分かりました。そこで、DNAマイクロアレイを用いて、エクソソームによってMG6細胞に発現誘導された遺伝子を探索したところ、補体成分であるC3が顕著に誘導されていました。実際に、抗C3阻害抗体をMG6細胞に作用させると、エクソソームによる軸索剪定能の亢進を阻害することが分かりました。

以上の結果から、神経細胞から放出されたエクソソームが、ミクログリアに補体成分C3を発現させることによって、軸索・シナプス剪定を促進することが明らかになりました。以前より、発生過程のシナプス競合において、勝者が敗者を淘汰する為に、punishment signalを放出すると考えられていますが、本研究によりその実体は、神経活動依存的に放出されたエクソソームなのではないかと考えられます。

論文情報

本研究は英国科学誌Scientific Reportsのオンライン版に、2015年1月23日(現地時間)付で掲載されました。

“Neuronal exosomes facilitate synaptic pruning by up-regulating complement factors in microglia.”
Bahrini I, Song JH, Diez D, Hanayama R.

Sci Rep. 2015 Jan 23;5:7989.

DOI: 10.1038/srep07989.

その他

研究成果に関する詳細は下記をご参照下さい。

脳内環境フォーラム
http://www.neurol.med.kyoto-u.ac.jp/beForum/