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( 2013年9月 )
α-シヌクレインの集積はSNARE複合体の機能異常が関係

概要

アルツハイマー病患者の脳内では、アミロイドベータペプチド(Aβ)やタウタンパクの蓄積に伴って神経細胞死が起こり、症状が出現します。アルツハイマー病の診断は死後脳を解析してAβやタウの蓄積を評価することで確定されますが、生前に確定診断を行うことはできません。生体脳の検査により確定診断に近い情報を得ることを目的として、ポジトロン断層撮影(PET)によるAβ蓄積の可視化が近年実現しましたが、タウ蓄積の可視化技術は確立していませんでした。
新学術領域研究「脳内環境」A03計画研究代表者の樋口真人チームリーダー(放射線医学総合研究所)らは、タウ病変に選択的に結合する薬剤を開発し、モデルマウスのタウ病変を生体多光子顕微鏡およびPETを用いて捉えることに成功しました。次いでこの薬剤をヒトのPETスキャンに応用し、アルツハイマー病患者脳におけるタウ病変の可視化を実現しました。アルツハイマー病の発症と進行の過程で、タウ病変は脳内の海馬付近で蓄積が始まり、大脳辺縁系全体、ひいては大脳皮質の広い領域へと蓄積部位が広がることが確認されました。これは脳内環境汚染物質であるタウが細胞外環境の病的変化を通じて伝播することを示唆する所見です。タウの脳内伝播メカニズムを解明し、これを抑制する治療法を開発する上で、タウ病変のPETイメージングは重要な役割を発揮すると考えられます。また、今回の研究ではアルツハイマー病以外の認知症でもタウ蓄積を可視化することができました。従って、タウ蓄積の有無や分布に基づいて、認知症の早期診断、どのような疾患が原因となっているかの鑑別診断、ひいては認知症の進行の客観的評価が可能になると見込まれます。

論文情報

この研究成果は米国神経科学専門誌「Neuron」9月18日(米国現地時間)付オンライン版に掲載されました。
Imaging of tau pathology in a tauopathy mouse model and in Alzheimer patients compared to normal controls.
Maruyama M, Shimada H, Suhara T, shinotoh H, Ji B, Maeda J, Zhang MR, Trojanowski JQ, Lee VMY, Ono M, Masamoto K, Takano H, Sahara N, Iwata N, Okamura N, Furumoto S, Kudo Y, Chang Q, Saido TC, Takashima A, Lewis J, Jang MK, Aoki I, Ito H, Higuchi M.
Neuron Volume 79, Issue 6, 18 September 2013, Page 1094-1108


その他

研究成果に関する詳細は下記をご参照下さい。

脳内環境フォーラム
http://www.neurol.med.kyoto-u.ac.jp/beForum/

放射線医学総合研究所
http://www.nirs.go.jp/information/press/2013/09_19.shtml