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( 2013年4月 )
α-シヌクレインの集積はSNARE複合体の機能異常が関係

概要

動物の生存にとって体液(細胞外液)の塩濃度を一定に保つことが必要不可欠です。体液のナトリウムイオン(Na+)濃度は通常、135~145 mMに厳密に維持されています。脳では、例えば脱水でNa+濃度が上昇すると、喉の渇きを覚えるようになる神経の働きがあります。この時、脳内にはNaxというチャンネルがあり、これがNa+濃度を感知する機能を持つことが知られていました。しかし体外ではNaxはNa+濃度が150 mMを超えないと開口せず、生理的範囲のNa+濃度の変動を検知するのかどうかは不明でした。今回、基礎生物学研究所 統合神経生物学研究部門 檜山武史助教らは、Naxは生体内では血圧調節物質であるエンドセリン-3の存在により、生理的なNa+濃度である135~145 mMでも反応することを明らかにしました。これによって、Naxが生体ではNa+濃度の恒常性維持に主要な役割を果たすセンサーであることが示されました。また、Naxの活性化が血圧調整ホルモンであるエンドセリンで調節されることから、Na+濃度と血圧との間には結びつきがあり、それを介在するのがNaxであると考えられます。

一連の結果から、NaxはNa+濃度調節という脳内環境維持に重要な役割を果たすことが分かりました。また、脳以外の場所に発現するNaxについては、これまで生理機能が不明でしたが、今回の研究成果により、脳以外においてもそれらの活性化が生理的Na+濃度でエンドセリンによって行われている可能性が出てきました。すなわち、Naxとエンドセリンは脳内と全身のNa+濃度環境を連動させる役割を担っていることが示唆されました。今後、エンドセリン遺伝子の発現と分泌調節機構が明らかになれば、脳をはじめ体内の様々な部位におけるNaxの生理機能の解明が一気に進むものと期待されます。

論文情報

この研究成果は、米国科学専門誌(Cell Metabolism)4月2日(米国現地時間)付オンライン版に掲載されました。

Endothelin-3 Expression in the Subfornical Organ Enhances the Sensitivity of Nax, the Brain Sodium-Level Sensor, to Suppress Salt Intake.
Hiyama TY, Yoshida M, Matsumoto M, Suzuki R, Matsuda T, Watanabe E, Noda M.
Cell Metab. Volume 17, Issue 4, 2 April 2013, Pages 507–519

その他

研究成果に関する詳細は下記をご参照下さい。

脳内環境フォーラム
http://www.neurol.med.kyoto-u.ac.jp/beForum/

基礎生物学研究所プレスリリース
http://www.nibb.ac.jp/press/2013/03/29.html