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1.「脳内環境マップ」の素地と領域の研究戦略

新学術領域研究「脳内環境」における、各班員の連携研究、ならびに班員同士の連携研究により、「脳内環境」の恒常性維持と破綻のメカニズムが明らかにされてきた。こうしたメカニズムが、「脳内環境」を構成する様々な種類の細胞にどのような影響を及ぼしているのかを、「脳内環境マップ」として示したものが以下の図である。

脳内環境

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「脳内環境マップ」は、領域推進の基本戦略図ともいえる。領域研究の推進は、①脳内環境の破綻を引き起こす神経細胞内メカニズムの解明(A01)、②神経細胞を取り巻く脳内環境の恒常性維持とその破綻ならびに毒性転換・病態伝播メカニズムの解明(A02)、③神経細胞を取り巻く脳内環境と神経細胞内メカニズムのクロストーク機構の解明(A01とA02の連携)の3項目に焦点を当てて、主にモデルマウスを用いたインビボ解析に代表される手法により実行する。神経細胞内外のメカニズムの中で鍵となる素過程を同定し、素過程間の因果関係を明らかにすることにより脳内環境の全体像を捉える。その際に、④最新の分子イメージング技術を駆使して主要な素過程の全てを生体脳で可視化し(マルチプロセス・イメージング)、時空間座標の中で素過程同士の因果関係を検証する。

2.平成23年度

領域発足時の計画班(緑色星印)の取り組みをマップ上に配置。

脳内環境

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[解説]発足時には計画班のみが存在し、A01「神経内メカニズムの解明」では、「異常タンパク蓄積とタンパク分解系不全」「樹状突起と軸索の異常」に重点が置かれ、オルガネラ品質管理不全も対象とされた。A02「神経外環境の解明」では、グリア細胞の毒性転換と毒性シグナル(環境汚染物質)放出に重点が置かれ、神経細胞からの毒性シグナルによる神経外環境の恒常性破綻(環境破壊)や、前駆細胞からのグリアへの分化、末梢からの液性・細胞性因子の影響も対象に含まれた。A03「イメージング技術の活用」では、主にPETを用いて毒性因子や神経免疫担当細胞を可視化する取り組みが進められた。

3.平成24年度・25年度

領域内研究活動の俯瞰図。各々の計画班(緑色星印)と第1期公募班(黄色星印)の取り組みをマップ上に配置。多くの班で取り組んでいる項目や成果が顕著な項目を青字で表示。

脳内環境

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[解説]A01「神経内メカニズムの解明」については、計画班・公募班共に「異常タンパク蓄積とタンパク分解系不全」「オルガネラ品質管理不全」「樹状突起と軸索の異常」に重点が置かれた。A02「神経外環境の解明」は、計画班中心でグリア由来の毒性シグナル解析を行っているのに対し、多くの公募班がグリアによる恒常性維持と神経保護機構の研究に取り組み、バランスよく全体がカバーされた。神経外での毒性増加や保護機能喪失が、上記3項目をはじめとする神経内メカニズムにいかなる影響を及ぼすか、班会議でも活発に議論された。A03「イメージング技術の活用」については、PET・MRIのようなマクロイメージングから、質量顕微鏡によるメゾスコピックな手法、蛍光によるミクロイメージングまで網羅できたことより、グループ内連携でマクロとミクロを結びつける取り組みを行えるようになった。イメージング標的も、異常タンパク蓄積・ミトコンドリア障害と酸化ストレス・神経伝達異常といった、上記神経内メカニズム3項目の解明に役立つものや、神経外環境アセスメントに不可欠な活性化グリアが対象となり、グループ間連携の素地が固まった。

4.平成26年度・27年度

領域内研究活動の俯瞰図。各々の計画班(緑色星印)と第1期公募班(黄色星印)、第2期公募班(水色矢印)の取り組みをマップ上に配置。多くの班で取り組んでいる項目や成果が顕著な項目を青字で表示。

脳内環境

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[[解説] A01「神経内メカニズムの解明」では、前期からの重点項目を発展させる形で、計画班・公募班共に「異常タンパク蓄積とタンパク分解系不全」「オルガネラ品質管理不全」「樹状突起と軸索の異常」において研究の進捗が見られている。これに加えて、「シナプス障害・軸索輸送の異常」においても公募班の活発な取り組みが目立っている。A02「神経外環境の解明」では、前期より恒常性維持機構(環境保全)とグリア毒性増加(環境汚染)にまたがり、バランスの取れた研究が進展している。さらに末梢からの免疫シグナルの移行や免疫細胞の浸潤、温度・浸透圧・機械的刺激・概日周期などの物理的環境にも集中して研究が取り組まれた。A01とA02の両方で、前駆細胞からの神経細胞やグリア細胞への分化を解明する研究にも注力され、脳内環境マップの全容が明らかになりつつある。A03「イメージング技術の活用」では、PET・SPECT・MRIのマクロイメージングで見えている現象が、細胞レベル・分子レベルでどのように観察されるかを、in vitroの光イメージングで明らかにする取り組みが進められ、イメージングの学術的意義が深まっている。