PubMedID 26951213 Journal Acta Neuropathol, 2016 Mar 7; [Epub ahead of print]
Title ECEL1 mutation implicates impaired axonal arborization of motor nerves in the pathogenesis of distal arthrogryposis.
Author Nagata K, Kiryu-Seo S, ..., Kiyama H, Saido TC
名古屋大学大学院医学系研究科  機能組織学木山研究室    桐生寿美子     2016/03/11

ECEL1/DINE遺伝子変異は神経因性の先天性多発性関節拘縮症の原因となる
私達の研究グループは理研の永田基礎科学特別研究員と西道シニアチームリーダーのグループとの共同研究で、ECEL1/DINE遺伝子の欠損および変異が運動ニューロン軸索分枝異常を引き起こし、これがヒト先天性多発性関節拘縮症の原因となることを明らかにしましたので報告させていただきます。

Damage-Induced Neuronal Endopeptidase (DINE)は末梢•中枢神経損傷に応答して発現誘導されるユニークな分子として2000年に私達グループが同定し命名したメタロプロテアーゼです。同時期に別のグループがEndothelin converting enzyme(ECE)との配列類似性から機能不明のプロテアーゼとしてクローニングしたのがEndotehlin-converting enzyme-like 1 (ECEL1)でDINEのヒューマンホモログに相当します。DINEは損傷神経細胞に加え胎生期よりアダルトに至るまで運動ニューロンに豊富に発現しています。DINE欠損マウスは、胎生期に運動ニューロン軸索が筋肉到達後適切に分岐せず横隔膜をはじめとする筋肉を制御できないことから、呼吸不全で生直後すぐに死亡することを私達はこれまで明らかにしてきました。最近、先天性多発性関節拘縮症の一部の家系にDINE/ECEL1遺伝子変異があることを複数の研究グループが報告しました。今回私達は運動神経をGFPで可視化しDINE欠損マウスの様々な四肢の筋肉での運動神経投射パターンを詳細に検討しました。その結果、DINE欠損マウスは遠位の筋でよりシビアな軸索分岐異常を示し、ヒト先天性多発性関節拘縮症の病態を良く反映することが明らかになりました。さらに、関節拘縮症の家系で見られるDINE遺伝子の一塩基置換変異を導入したノックインマウスを作製したところ、DINE欠損マウスと同様に軸索分岐異常を示しました。

本研究によりECEL1/DINE遺伝子の欠損および変異による運動ニューロン軸索分岐異常がヒト先天性多発性関節拘縮症の原因となることが明らかになりましたが、基質を含めDINEのバイオロジカルなメカニズムはまだ不明であり今後はこの点を明らかにしていきたいと考えています。
   
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