PubMedID 26896672 Journal FEBS J, 2016 Feb 20; [Epub ahead of print]
Title Translocated in liposarcoma regulates the distribution and function of mammalian enabled, a modulator of actin dynamics.
Author Sugiura T, Matsuda S, ..., Matsumoto M, Takumi T
広島大学神経精神病態制御学  内匠研究室    杉浦 智仁     2016/02/26

TLSはアクチン動態に関与するMenaの局在や機能を制御する
脳内環境の研究費による実験結果が論文になりましたので報告させていただきます。
我々は、家族性ALSの原因遺伝子の一つであるTLS/FUSのKOマウス脳において、スプライシングの変化を受ける標的の一つMenaとそのspliced variantであるMena insertの機能が、TLS KOによりどのような影響を受けるか解析しました。
【結果】
1.TLS KOマウス脳あるいはTLS KO MEFでは、TLS WTと比較してRT-PCRでMena insertの発現が有意に増加しており、またタンパクレベルでもTLS KO MEFではMena insertの発現が増加していた。
2.TLS KO MEFでは、Menaの細胞内局在(filopodiaなどへの集積)が阻害されるのに対して、Mena insertの集積はTLS KOでもWTと変わらず同等だった。
3.MEFの運動能を解析した実験では、TLS WTではコントロールに比べてMena, Mena insertいずれのtransfectionでも運動能を低下させる作用が認められたが、TLS KOではMenaは運動能に影響を与えず、Mena insertのみが運動能を低下させた。
4.初代培養の神経細胞における神経突起の伸長に関して、MenaはTLS WTにおいて突起伸長を促進させる傾向が見られたが、TLS KOでは有意な差は認めなかった。
5.Actin polymerizationなどの生化学的なEVH2ドメインの機能解析ではMena, Mena insert両者に有意な差を認めなかった。
6.マウス脳の懸濁液からEVH2に結合するタンパクを質量分析とWBで解析するとPCMT1がMena insertに優位に結合することがわかった。
【考察・意義】
以上の結果から、Menaの正常な局在・機能にTLSが関わっており、TLS KOで増加するMena insertはMenaと違いTLSの影響を受けにくいことが示唆されました。同じアクチン結合タンパクであるprofilin 1も家族性ALSの原因遺伝子の一つであり、アクチン細胞骨格系の機能異常が、一部の家族性ALSの病態において重要である可能性が示唆されました。
   
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