PubMedID |
26284939 |
Journal |
Nat Commun, 2015;7967, |
Title |
Breaking immune tolerance by targeting Foxp3(+) regulatory T cells mitigates Alzheimer's disease pathology. |
Author |
Baruch K, Rosenzweig N, ..., Cahalon L, Schwartz M |
理化学研究所 脳科学総合研究センター 内匠研究室 大内田 理佳 2015/09/29
Foxp3+制御性T細胞を標的とした免疫寛容の破壊によるアルツハイマー病理の軽減
アルツハイマー病は、慢性性の脳内炎症がその疾患症状の増悪に関わることが知られている神経変性疾患である。これまでに免疫抑制剤などを用いた治療法においては失敗を繰り返している中、マウスモデルを用いた解析では、CNSに骨髄細胞を動員すると疾患の修復効果が認められることが示された。著者らは、アルツハイマーモデルである5XFADマウスを用いて、一過性にFoxp3+制御性T細胞を消失させるか、または薬剤でその細胞活性を抑制することが、アミロイドβプラークの除去や脳内炎症の緩和、および認知機能低下を抑制することに繋がることを明らかにした。さらに、そのメカニズムとして、一過性の制御性T細胞の消失が、脳の脈絡叢(免疫細胞がCNSへとトラフィッキングする選択的な出入り口)に影響を与え、単球由来マクロファージや制御性T細胞の脳内プラーク病変部位への動員に関連していることを証明した。全身性の制御性T細胞は、自己免疫疾患を抑制するなど重要な役割を担っているが、著者らの結果は、少なくとも神経変性疾患の状況下において、脳内で修復のための免疫システムが求められる際に、全身性の制御性T細胞はそれを負に制御することを示しており、同時に、全身性と組織浸潤性の制御性T細胞が、脳病理においては異なる機能を発揮する可能性も提示した。以上の結果より、著者らは、全身性の免疫寛容を破壊することが、アルツハイマー病治療法の新規標的となり得る可能性を示唆している。