PubMedID 24231806 Journal Science, 2013 Nov 14; [Epub ahead of print]
Title mTOR Inhibition Alleviates Mitochondrial Disease in a Mouse Model of Leigh Syndrome.
Author Johnson SC, Yanos ME, ..., Sedensky MM, Kaeberlein M
理化学研究所 脳科学総合研究センター  内匠研究室    大内田 理佳     2013/11/26

リー脳症のマウスモデルにおいてmTOR抑制はミトコンドリア障害を軽減する
ミトコンドリア機能障害は、好気的エネルギー産生が行えなくなることにより生じる障害で、このようなエネルギー需要の多い、脳、骨格筋や心筋が異常をきたすことが多く、筋肉の退化、心筋症、ガン、糖尿病などと密接に関わっている。なかでも、リー脳症は、乳幼児期から精神運動発達遅延、退行を起こす深刻なミトコンドリア障害であるが、現時点で決定的な治療法や治療薬が存在しない。著者らは、リー脳症のモデルマウスを用いて、免疫抑制剤として知られるラパマイシンという化合物が、病気の進行を遅らせる効果があることを示した。
リー脳症モデルマウスであるNdufs4欠損マウス(Ndufs4; NADH dehydrogenase iron-sulfur protein 4)に、毎日ラパマイシン8mg/kgを腹腔内投与すると、?生存率が上昇し、?特徴的な体重変動が抑えられ、?前肢把持の徴候が抑制され、?ロータロッド試験での運動機能が改善した。
また、この病気に伴う神経学的特徴である活性化グリア細胞の集積が、ラパマイシンを投与したNdufs4欠損マウスの小脳や嗅球で顕著に減少し、100日齢に達してもその徴候は認められなかった。
このラパマイシンによる作用機序は、ミトコンドリアの本質的な機能や、呼吸鎖複合体の一つであるcomplex Iのアセンブリには影響を与えず、ラパマイシンの標的分子であるセリン・スレオニンキナーゼmTORのシグナル経路に作用することを示唆した。即ち、ラパマイシンが、mTORの標的であるリボソーム蛋白質S6やインスリン様成長因子1型受容体などのリン酸化を抑制することで代謝経路を調節し、体脂肪や肝臓における脂肪の減少を抑えている可能性を示唆した。一方、Ndufs4欠損マウスの脳内で特徴的な、遊離アミノ酸や遊離脂肪酸の減少、またGABAやドーパミン量の低下が、ラパマイシンにより改善されることを示した。
以上の結果は、mTOR抑制剤が、リー脳症を含むミトコンドリア障害の治療に有効である可能性を示唆するが、一方で、ラパマイシン誘導体は、免疫抑制や高脂血、創傷治癒遅延などの副作用を併せ持つことも知られる。従って、Ndufs4欠損マウスにおいて、ラパマイシンが病気を軽減する作用機序をより詳細に理解することが必要とされる。
   
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