PubMedID 23516607 Journal PLoS One, 2013;8(3);e59148,
Title Biogenesis and Proteolytic Processing of Lysosomal DNase II.
Author Ohkouchi S, Shibata M, ..., Nagata S, Uchiyama Y
順天堂大学・医学研究科  神経疾患病態構造学/神経機能構造学    内山安男     2013/04/11

Biogenesis and Proteolytic Processing of
DNase IIは貪食した細胞(アポトーシス等で死んだ細胞)のDNAの分解に必須なヌクレアーゼである。DNase IIを欠損すると胎生致死で(Kawane et al., Nature 2001)、貪食した細胞(脳ではミクログリア)にDNAが蓄積する。これまで、細胞内での分子特性については殆ど知られていなかった。私達は、マウスDNase IIの抗体を作製し、DNase IIを欠損する組織で全く反応しないことを確かめた後、DNase IIの組織分布、細胞内局在、プロセッシングについて検討した。DNase IIは脾臓と骨髄に発現が比較的に高かった。これらの組織では、マクロファージ/単球に分布して、lamp1陽性のリソソームに局在が認められた。cDNAから予想される分子量は45 kDaであるが、細胞に内在する分子量は30 kDaと23 Daであった。細胞分画すると、ミクロソーム分画では45 kDaであるが、23 kDaと30 kDaはリソソーム分画に検出された。DNase II-Hisを発現したCos-1細胞で、DNase IIのプロセッシングとシステインプロテアーゼやアスパラギン酸プロテアーゼの阻害剤を用いてその効果を検討した。その結果、カテプシンDなどのアスパラギン酸プロテアーゼの阻害剤では全く変化は見られなかったが、カテプシンBやLの阻害剤であるE-64によって認められる分子は30 kDaのみであることが分かった。これを組織細胞でのプロセッシングで検討するため、肝臓と脾臓でConA分画を採取して調べた。検出できる分子型は野生型マウス由来の組織では23 kDaと30 kDaであったが、カテプシンLを欠損した肝臓で23 kDaの分子は検出できなかった。また、カテプシンDを欠損する肝臓や脾臓では野生型と全く同様であった。この結果は、肝臓ではカテプシンLは一本鎖DNaseのプロセッシングに関与することを示している。また、DNase IIは45 kDaが前駆体で、リソソームで30 kDaてと23 kDaにプロセッシングされることが明らかとなった。さらに、DNase II-Hisを発現したCos-1細胞の培養上清を調べてみると、前駆体型の45 kDa分子が分泌されており、その活性の有無を検討した。DNase IIの活性型は、plasmid DNAを分解することは確かめた。培養上清より得た前駆体DNase IIは、pHの低い所では活性を有するが、中性領域では活性がない。通常は、リソソームに送られるとpHが下がり、活性部位が開くとともに前駆領域は切断される。培養上清を用いた実験は、pHが下がるだけでも、活性部位が開くためにDNAを分解できることを示している。
 結論として、DNase IIはリソソームでプロッセッシングされて活性化される一方、カテプシンLはこのヌクレアーゼのプロセッシングに関与することが明らかとなった。

 通常、核DNAを処理することは神経細胞ではないし、DNase IIの分布もみられない。しかし、胎生期には脊髄の運動ニューロンを初め多くの神経細胞が除去される。また、神経疾患でも細胞死が起こればミクログリアが細胞の処理に当たりDNase IIが核DNAを処理する。このような状況ではDNase IIは貪食細胞に陽性となる。
   
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